「あっちの刑務所は居心地がええぞ。」そんな声が聞こえた。年を越すのに寒さが厳しいから、軽犯罪でも起こして刑務所に入ろうというような相談をしていたのだ。
確かに寒さは厳しかった。とても外で寝泊まりできるような気温ではない。刑務所はベッドもあり、食事も出るから、死ぬほど凍えるよりは、その方がマシな選択だと聞きながら思った。それにしても、酒を飲みながら大声で談笑していて、なにか突き抜けた明るさがある。しかし、事態は深刻に違いない。
不意に自分の存在のありかを意識した。自分は安定した職業に就くことができ、一定の収入を得て困ることなく生活している。しかし、組織に所属し労働することの苦しさや空しさを感じて、所属することを辞めて自由を手に入れようとしている。
実際には、副収入を得る方法を模索しているだけで、本気でリタイアできるとは思っていないのだ。何も失わずに自由時間を手に入れたいと虫のいいことを思っている。
目の前に、本当のギリギリで生きている人たちがいる。自分は高い階層の所属を抜けても、また別の所属がある。地域があり家族もいる。でも、あらゆる階層の基盤がなくなったら、これ以上、自由になると言って抜け出す基盤がなくなり、しかも経済力がなかったら、どうなるのだろう。その時、自殺する気持ちが少しわかったような気がした。
我々の存在はもろいのだ。忙しくてバタバタしているうちが、本当は幸せなのかもしれないな・・・。
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